40万年前に出現したと考えられているネアンデルタール人の骨の周りから、花粉の化石が発見された。
この埋葬行為によって、サルがヒトになったといわれるほど、死者を弔う習慣はしごく人間的なものだ。
その後、さまざまな葬送法が発展したが、それは宗教によって左右され、宗教はその土地の自然環境に影響を受ける。イスラームは砂漠に生まれた宗教。砂漠ゆえに墓をつくってもすぐに埋まって所在が分からなくなる。ゆえにイスラームには墓がない。木がない土地では人を燃やせるほどの材木が手に入らないので土葬にすることが多い。土葬では大地が穢れ、水葬では水が穢れ、火葬では火が穢れると考えたゾロアスター教では鳥葬にした。同じように、鳥葬を行うチベットでは死者の魂が天高く昇れるようにと祈る。
世界のお墓には、自然とそして人々の心の動きが反映されて奥深い。陽気なお墓もあれば、きらびやかなお墓も、奇妙なお墓も、海中のお墓も、宇宙のお墓も、さまざまある。しきたりの違いに驚くことがあるけれど、それはひとえに文化の違い。故人を思う気持ちは40万年前から古今東西いずこも変わらない。
50カ所以上に及ぶ世界のお墓を紹介した本書ですが、時代の波にのまれて、この先失われていく風習も多い。